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マルタ・アルゲリッチの伝記

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クリスマスのあと、ピアニスト、マルタ・アルゲリッチの伝記を読みました。
オリヴィエ・ベラミー氏による、2013年1月出版の本。(実際は2010年の出版でした。私の読んだのは大きさがある本なのだけれど、ハードカバーではなく文庫本だったらしい)




(↓フランスのアマゾン・サイトに飛びます)
Martha Argerich




この本は、昨年の初めに出た本なのに、もう日本語版が出版されているようです。
(後日注:というわけでさすがに1年で翻訳されて出版されたわけではありませんでした)


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(↓日本のアマゾン・サイトに飛びます)
マルタ・アルゲリッチ(藤本優子/訳)


仏語版が出て、買いたいな〜読みたいな〜などと思っているうちに、あっというまに日本語版が出て、両方同時にすら読もうと思えば読めてしまう…夢のような時代です。

とにかく、私が凄いと思ったのは、まだこのピアニスト本人が活動中にもかかわらず、既に「暴露的」な部分を含む正直な伝記が書かれた、という部分です。

特に、マルタ・アルゲリッチのように、クラシック好きな人ならたいていの人が名前を聞いたことがある、のみならず、どういった演奏をする人か、ということが知れ渡っている。そういうレベルの最後の「スター」のひとりの伝記が、こうして「もう読める」ことが凄い。

3人の旦那様と結婚して3人の娘がいるということも、なんとなく「おとぎ話的」に感じていたし、実際の彼女の人生については、私はよく知りませんでした。ブリュッセルに家を持っているということも聞きますが、実際には全く町で出会わないので、他の場所にも家があるのだろう、と思っていました。

でも普通、現役の人の場合、自分で回想録や自叙伝を書くのでなければ、そう簡単に細部を本に書いてしまったりしないものです。

この本は、アルゲリッチの人生を「彼女が住んだ町」ごとに各章で扱って成り立っているので、どこに住んだか、今どこに住んでいるか、通りの名前までしっかり出てきます(番地はもちろん無記載ですが)。


今までに何度か演奏会で聴く機会はもちろんあり、そこで彼女の波瀾万丈な人生をかいま見た、という親近感はなく、
「何故このようなピアニストが存在しうるのか、一体この人の超人ぶりは何なのだろうか」という、畏怖の対象。


その日常生活が暴かれるような恐怖も感じつつ…


読んでいる間中、彼女の音、彼女のつくる音楽が頭によみがえっていました。このような人生の中で、あのような音を出していたのだ、と音楽を重ねながら読んで行くと、なるほどベラミー氏の「関係者密着取材」の賜物である「アネクドート」はどれも信憑性があり、さもありなん、と納得させられてしまうものがありました。


ただ、私が不満だったのは(不満も何も…勝手な好みですが!)どうも「アネクドート」=小話があまりにもたっぷりあるため、どの証言もアルゲリッチさんのことを、ちょっと物見的に眺めている視点が、苦い後味を醸し出していること。

アルゲリッチさんの発言の本当の意味は、空の向こうに消えちゃったのか?と感じた文章もありました。そこで私は「そんな決めつけ方ひどいじゃん…。」と、思ったり。ただ、アルゲリッチさんご本人が、同時代的にこれを読めるのだから(まあ、読んだのだ、と仮定します)そこで「なんかこれ違うわよ」と言いたければ言えるのに、言ってないのだから、正当な解釈である。というかのような、無言の「お墨付き的圧力」も感じなくはないです。


別にアルゲリッチさんを知っているわけでもない私が、「こういう書き方は、違う感じもする」と言おうが言いまいが、「マルタはこういう人だから、こうなってしまったのはしょうがないことなのだ」と私たちを納得させようとしてくれるところが、ちょっとおせっかいっぽい。


このような発言、このような行動があった、というところで、その行動の「切迫した必然性」について掘り下げるより、因果関係をやや「ねえ、不思議だと思いませんか?この、偶然の一致は?」と、たたみかけて来るところとか。


もちろん、その土地土地での歴史的背景などはよく書き込んであり、私の脳裏にはアルゼンチンの公園の雰囲気とかウィーンのピアノ部屋の空気だとかがしっかり刻み付けられました。何か物悲しいような、後味と、懐かしいものを手探りでポケットから探し出そうともがいているような読後感です。



そして、アルゲリッチさんが私の義理の家族の人であるかのように、いろいろなことを知ってしまいました。



ただ、唯一、「そうか。」と思ったのは、彼女がミニスカートで協奏曲を弾いたのは、トランクが届かなくて、それしかなかったからだ、という話でした。けっこうわざとそういう格好なんだと思ってしまっていたので、謝りたい気分です。

そして、昔、ロンドンのバービカンの舞台裏で一緒に撮ってもらった写真は、今はどこにしまっただろう?と急に思い出したのでした。私よりそんなに背が高くもない、小柄なマルタ。写真を撮る前に、タンパックスが箱ごと入ったハンドバッグを隠しもしなかった、マルタ・アルゲリッチ。私たちの大スター。伝記を読んで、彼女の人生から学ぶことも出来なければ、何一つ真似出来ることすらなかった、と断言出来ます。








ピアノ…
また、もっと、ピアノを聴きたくなっちゃったよ。それがこの本の効用かな。出て来る歴史的演奏の録音を、日本語版の方はセットで購入できるらしいので、聴きながら読めたらもっと楽しそうです。
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